電気代の明細を見ると、「基本料金」「燃料費調整額」などさまざまな項目があります。
しかし、それぞれの意味や、電力会社によって料金が違う理由を正確に理解している人は少ないかもしれません。
この記事では、
- 電気代の料金内訳
- 市場連動型は避けた方が良い理由
- 関西電力・九州電力が安い理由
- 古い計算式と新しい計算式の違い
を分かりやすく解説します。
電気代の主な料金内訳
電気料金は大きく以下の項目で構成されています。
基本料金
契約アンペアや契約容量に応じて毎月固定でかかる料金です。
電気を全く使わなくても発生します。
電力量料金(従量料金)
使用した電力量(kWh)に応じて計算される料金です。
多くの家庭向けプランでは、使用量が増えると単価が高くなる「段階制料金」が採用されています。
燃料費調整額
火力発電に使う燃料(LNG、石炭、石油など)の輸入価格変動を反映する料金です。
燃料価格が上がると請求額も増えます。
電源調達調整単価
一部の電力会社が導入している項目で、市場価格や調達コストの変動を反映します。
新電力や東京電力などで見られます。
再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)によって生じるコストを全国一律で負担する項目です。
国が毎年度単価を決めています。
市場価格調整額
電力スポット市場(JEPX)の価格に連動して変動する料金です。
市場価格が高騰すると請求額も大幅に増えます。
その他の可能性がある項目
- 最低料金(使用量が少なくても一定額を請求)
- 契約変更・解約違約金
- 季節別・時間帯別料金調整
- 送配電サービス利用料金(明細には直接出ない)
- 付加サービス料金(見守りサービスなど)
市場連動型はやばい?その理由
最近、市場連動型プランという電気料金の契約形態が注目を集めています。
これは、電力取引所(JEPX)の市場価格に連動して、時間帯ごとの料金単価が30分単位で変わる仕組みです。
一見すると「安い時間帯を狙って電気を使えば節約できる」ように思えますが、実際には大きなリスクがあります。
市場連動型の特徴
- 電力需要が高い時期・時間帯は高額 真夏の昼間や真冬の朝夕はエアコン需要が集中し、市場価格が跳ね上がります。 特に寒波や猛暑の時には、1kWhあたり数十円〜百円超に達することも。
- 電力需要が低い時期・時間帯は安い 春や秋の夜間などは需要が低く、価格も下がります。 ただし、安くなるのは使用量が少ない時期や時間帯のため、節約効果は限定的です。
要は、
- 通常8,000円の電気代が15,000円と高くなるリスク
- 通常4,000円の電気代が3,000円と低くなるリターン
総合的に考えると、電気代が高くなることが想像できますよね?(そもそも大勢が電気を使わない時間帯は自分自身も使わないし、大勢が電気を使う時間帯は自分自身も電気を使う)
結果的にどうなるか
- 冬・夏など電気を使う時季ほど請求額が高騰
- 春・秋は少し安くなるが、総合的には年間コストが不安定
- 予期せぬ高額請求のリスクがある
そのため、市場連動型は時間帯や季節ごとの使い方をコントロールできる人向けであり、一般家庭にとってはかなりハードルが高い料金プランです。
実体験からご紹介
実は筆者も前まではソフトバンク光という市場連動を採用している電力会社を使っていました。
以下の画像は、東京電力管内に住んでいる筆者の
- ソフトバンクでんき時代の電力使用量と請求額
- 現在使用している電力会社の電力使用量と請求額
です。
ソフトバンクでんき

0円でんき

先に請求書をお見せしたところで、2社の電気代の仕組みと内訳の比較について簡潔にまとめてみます。
ソフトバンクでんきと0円でんきの仕組み
項目 | ソフトバンクでんき | 0円でんき |
---|---|---|
基本料金 | 10A毎:311円75銭 | 0円 |
電力量料金 | 0〜120kWhまで :29円80銭 121〜300kWhまで:36円40銭 301kWh以降 :40円49銭 | 一律:34円80銭 |
電気代の内訳 | ・基本料金 ・電力量料金 ・燃料費調整額 ・電力市場連動額 ・再エネ賦課金 | ・電力量料金 ・燃料費調整額 ・再エネ賦課金 |
0円でんき:2025年7月時点
東京電力管内の数値
ソフトバンクでんきと0円でんきを比較
項目 | ソフトバンクでんき (A) | 0円でんき (B) | 差分 (A)-(B) |
---|---|---|---|
電力使用量 | 271kWh | 298kWh | -27kWh |
基本料金 | 623円50銭 | 0円 | 623円50銭 |
電力量料金 | 0〜120kWhまで :3,576円00銭 121〜300kWhまで:5,496円40銭 301kWh以降 :0円00銭 | 10,370円40銭 | -1,298円00銭 |
燃料費調整額 | 1kWh:-6.08円 -1,647円68銭 | 1kWh:-6.88円 -2,050円24銭 | 402円56銭 |
電力市場連動額 | 1,001円44銭 | 0円 | 1,001円44銭 |
再エネ賦課金 | 945円00銭 | 1,186円00銭 | -241円00銭 |
合計 | 271kWh 9,994円66銭(政府支援は除く) | 298kWh 9,506円16銭 | ※1 |
0円でんき:2025年7月時点
東京電力管内の数値
※1
0円でんきの方が27kWh多く使用しているにも関わらず、488円50銭安い。
条件をを合わせてソフトバンクでんきと0円でんきを比較
項目 | ソフトバンクでんき (A) | 0円でんき (B) | 差分 (A)-(B) |
---|---|---|---|
電力使用量 | 271kWh | 271kWh | 0kWh |
基本料金 | 623円50銭 | 0円 | 623円50銭 |
電力量料金 | 0〜120kWhまで :3,576円00銭 121〜300kWhまで:5,496円40銭 301kWh以降 :0円00銭 | 9,430円80銭 | -358円40銭 |
燃料費調整額 | 1kWh:-6.08円 -1,647円68銭 | 1kWh:-6.08円 -1,647円68銭 | 0円00銭 |
電力市場連動額 | 1,001円44銭 | 0円 | 1,001円44銭 |
再エネ賦課金 | 945円00銭 | 945円00銭 | 0円00銭 |
合計 | 271kWh 9,994円66銭(政府支援は除く) | 271kWh 8,728円12銭 | 1,266円54銭 (0円でんきの方が安価) |
0円でんき:2025年7月時点
東京電力管内の数値
もちろん、時季や時間帯を見極めて使用したりポイント還元やキャンペーン等を加味するとソフトバンクでんきの方が安くなる時もあるが、普通に生活している分ではトータルすると0円でんきの方が安いと筆者は思います。
関西電力・九州電力が安い理由
さて、話は変わりますが同じ日本国内でも、電力会社によって料金水準は違います。
特に関西電力と九州電力は比較的安い傾向がありますが、その理由のひとつが「燃料費調整制度の計算式」にあります。
原因①:旧制度(上限あり)を維持
燃料費調整制度は、火力発電の燃料価格変動を電気代に反映させる仕組みです。
2022年の国際燃料価格高騰を受けて、多くの電力会社(東京電力、中部電力など)が上限なしの新制度に移行しました。
しかし、関西電力・九州電力は旧制度(上限あり)を継続しています。
結果、燃料価格が高騰しても利用者が負担する金額は一定額までしか上がらないため、請求額が抑えられます。
原因②:原子力発電比率が高い
両社は原子力発電所の稼働率が比較的高く、火力発電用燃料の調達コストが少なく済みます。
燃料費高騰の影響を受けにくく、旧制度でも経営的に耐えられる構造です。
旧制度と新制度の違い
項目 | 旧制度(上限あり) | 新制度(上限なし) |
---|---|---|
燃料費調整額 | ±○円/kWhまでの上限あり | 上限なし |
急騰時の値上げ幅 | 小さい | 大きい |
電力会社の負担 | 大きい(上限超過分は会社負担) | 小さい(利用者に転嫁可能) |
利用者の負担安定性 | 高い | 低い |
まとめ
- 電気代は複数の項目で構成され、その中でも燃料費調整額は変動が大きい部分です。
- 関西電力・九州電力は燃料費調整制度の旧計算式(上限あり)を維持し、燃料高騰分の一部を会社負担しているため、比較的安い料金を維持できています。
- 原発比率が高く燃料依存度が低いことも、安さの背景にあります。
FAQ(よくある質問)
- Q燃料費調整額は毎月どれくらい変わるの?
- A
燃料価格の変動を反映するため、毎月単価が見直されます。
輸入燃料価格が下がれば減額、高騰すれば増額されます。変動幅は数円/kWhから数十円/kWhになることもあります。
- Q市場連動型プランはどんな人に向いていますか?
- A
昼間にあまり電気を使わず、夜間や需要が低い時間帯にまとめて電気を使える人に向いています。
太陽光発電+蓄電池を持っていて、自家消費できる家庭なら有利になる場合があります。
- Q関西電力や九州電力以外に安い会社はありますか?
- A
一部の新電力会社でも安い料金プランはありますが、燃料費調整制度の上限がない場合や、市場連動型の場合は高騰リスクがあります。総合的な条件を比較することが大切です。
- Q再エネ賦課金はどうやって決まるのですか?
- A
国が毎年度、全国一律の単価を決めます。これは再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)によって発生する費用を、全国で負担するための仕組みです。
- Q旧制度の燃料費調整額は今後も続きますか?
- A
関西電力・九州電力ともに現時点では旧制度を継続していますが、将来的には制度変更の可能性もあります。国の方針や燃料価格動向によって変わる可能性があります。